ECサイトの競合分析を始める前に、まず自社が戦っている市場の全体像を数字で把握することが欠かせません。感覚ではなく公的データを起点にすることで、競合のどこを見るべきか、自社がどのポジションにいるのかが明確になります。本ページでは、経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」(2025年8月公表・2024年実績)などの公的データをもとに、EC事業者が押さえるべき市場分析と競合分析の要点を整理します。
経済産業省の調査によると、2024年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は26兆1,225億円で、前年比5.1%増と拡大が続いています。このうち、物販系分野の市場規模は15兆2,194億円(前年比3.7%増)でした。
ここで重要な指標がEC化率です。EC化率とは、すべての商取引金額に対して電子商取引が占める割合を指します。2024年の物販系BtoC-ECのEC化率は9.78%で、前年から0.4ポイント上昇しました。この数字が意味するのは、物販の購買のうちオンライン経由はまだ約1割に過ぎず、残る約9割はリアル店舗などオフラインで動いているということです。つまりEC市場には、まだ取り込めていない需要が大きく残されており、競合に先んじて設計を最適化できれば伸びしろは十分にあると読み取れます。
参考までに、経済産業省は世界のBtoC-EC化率を約20.1%と推計しており、日本の9.78%は主要国と比べてEC化の余地が大きい水準にあります。自社の売上が伸び悩んでいると感じても、市場そのものは縮小しておらず、むしろ拡大局面にある点は競合分析の前提として押さえておくべきです。
EC化率は商品カテゴリによって大きく異なります。同じ「ECの競合分析」でも、自社が属するカテゴリのEC化がどこまで進んでいるかによって、取るべき戦略はまったく変わります。経済産業省の調査による主なカテゴリ別のEC化率は次の通りです。
「書籍、映像・音楽ソフト」は56.45%と過半数がオンラインに移行しており、「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」も43.03%、「生活雑貨、家具、インテリア」は32.58%と高水準です。これらのカテゴリでは、購買行動の中心が既にオンラインにあるため、競合分析でも「オンライン上での見つけられやすさ(検索順位・モール内順位)」と「価格・レビュー」の比較が勝敗を左右します。オフラインからの新規流入を待つより、既にオンラインで比較検討している顧客をいかに奪うかが焦点になります。
一方、「衣類・服装雑貨等」は23.38%、「化粧品、医薬品」は8.82%、「食品、飲料、酒類」は4.52%にとどまります。特に食品カテゴリはEC化率が5%未満で、市場規模は3兆1,163億円と物販最大でありながらオンライン化はこれからという段階です。こうした低EC化率カテゴリでは、競合分析の視点は「まだECを使っていない顧客をどうオンラインへ呼び込むか」に移ります。競合が実店舗やSNS、リアルな体験からどのようにEC購入へ橋渡ししているかを観察することが、そのまま自社の成長余地の発見につながります。
つまり、自社カテゴリのEC化率を確認するだけで、競合の「何を」重点的に分析すべきかの当たりがつくのです。
EC事業者にとって避けて通れないのが、巨大プラットフォームの存在です。調査分析によれば、楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングの3大ECモールの合計流通総額は約11兆2,000億円に達し、物販系EC市場全体に占めるシェアは73.7%に上ります。物販ECの4分の3近くが、この3モール上で動いている計算です。
この構造が競合分析に与える示唆は明確です。第一に、多くの中小EC事業者にとって「競合」はモール内の同カテゴリ出店者であり、競合分析の第一歩はモール内検索での自社と競合の表示順位・レビュー数・価格帯の比較になります。第二に、自社ECサイト(自社ドメインの独立店舗)を運営している場合は、モールに流れている膨大な需要をいかに検索エンジン経由で自社サイトへ引き込むかが課題となり、競合の自然検索対策(SEO)やコンテンツが分析対象になります。自社がモール出店なのか独立ECなのかで、見るべき競合の場所が変わる点に注意が必要です。
なお、この3大モールの成長要因を分析すると、平均単価の上昇(+4.0%)よりも販売数量の増加(+8.6%)の寄与が大きいことがわかっています。値上げで売上を伸ばしたのではなく、購入する人と回数が増えたことが成長を支えている、という事実は、競合がどこで顧客接点を増やしているかを分析する際の重要な手がかりになります。
市場データで全体像を掴んだら、それを自社の競合分析に落とし込みます。感覚ではなく、次の順序で数字を軸に進めるのが効果的です。
まず前述のカテゴリ別データで、自社が「オンライン競争が主戦場のカテゴリ」なのか「オフライン送客が鍵のカテゴリ」なのかを判定します。これにより競合分析の重点(モール内順位重視か、自然検索・集客重視か)が定まります。
3大モールが7割超を占める以上、モール内で自社商品と競合する出店者と、検索エンジンで同じキーワードに表示される競合サイトの双方を洗い出します。前者は価格・レビュー・配送条件、後者はコンテンツ・被リンク・更新頻度が比較軸になります。
市場は拡大局面にあり、競合も施策を変え続けます。競合の新規キャンペーン、特集ページ、価格改定、新規レビューの傾向などを定点観測し、自社の打ち手に反映させることが、拡大する市場でシェアを取るための継続的な作業になります。
ECサイトの競合分析は、公的データによる市場の全体像の把握から始めるのが最も確実です。2024年の物販系BtoC-EC市場は15兆円規模でEC化率9.78%とまだ伸びしろが大きく、自社カテゴリのEC化率によって取るべき戦略は大きく変わります。さらに3大モールが市場の73.7%を占める構造を踏まえ、モール内と自然検索の両面で競合を捉えることが重要です。こうした数字を起点にすれば、感覚的な競合チェックから脱却し、拡大する市場の中で自社の勝ち筋を具体的に描くことができます。
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